スマート家電が増えるとWi-Fiが不安定になる——このお悩みは、家電そのものの故障ではなく「家庭内ネットワークの設計」が原因であることがほとんどです。スマートリモコンや見守りカメラ、ロボット掃除機などのIoT機器は、1台あたりの通信量はごくわずかなのに、台数が増えると急に反応が鈍くなったり、アプリから操作できなくなったりします。本記事では、東村山の一原ITシステムが、その原因と接続台数の考え方、そして今日から見直せる具体的な対策を順番に解説します。
スマート家電が増えるとWi-Fiが不安定になる3つの原因
まず押さえておきたいのは、スマート家電の不調は「回線が遅いから」ではないケースが多いということです。光回線を速いプランに変えても改善しなかった、という声をよくいただきますが、それもそのはず。スマート家電が抱えている問題は速度ではなく「電波の混雑」と「台数」だからです。
原因1:スマート家電の多くは2.4GHz帯しか使えない
Wi-Fiには2.4GHz帯と5GHz帯という2つの周波数帯があります。ルーターメーカーの説明では、2.4GHz帯は遠くまで届き、5GHz帯は速度が速いという特性の違いがあるとされています(バッファローのサポート情報より)。
ここで問題になるのが、スマートリモコン・スマートプラグ・見守りカメラ・ロボット掃除機といったIoT機器には、2.4GHz帯にしか対応していない製品が少なくないという点です。ルーターメーカーのサポート情報でも「2.4GHz帯専用のネットワーク家電(ロボット掃除機/エアコン/洗濯機等)」というくくりで、こうした機器は2.4GHz帯側のSSIDに接続するよう案内されています(NEC AtermのサポートQ&A No.00100より)。つまりスマート家電は、スマホやパソコンのように「空いている5GHzへ逃がす」ことができません。
▶ 2.4GHz帯はもともと混雑しやすい
さらに2.4GHz帯は、Wi-Fi以外の機器も同じ周波数を使っている帯域です。総務省の東海総合通信局は、無線LANがつながりにくいときの相談への回答として、次のように説明しています。
特に2.4ギガヘルツ帯の電波を使用している無線LANは、いろいろな機器で同様な周波数帯を使用しているため電波の干渉が起こりやすいです。(中略)電子レンジのように、2.4ギガヘルツ帯の非常に大きなノイズを出す製品もあります。電子レンジを使用しているときは、無線LANの通信が不安定になることがあります。
出典:総務省 東海総合通信局「電磁障害」
同じページでは、Bluetoothのキーボードやマウスを無線LANの近くで使うと速度が低下することがある、とも触れられています。つまり2.4GHz帯は、もともと「ご近所のWi-Fi・電子レンジ・Bluetooth機器」がひしめき合う場所。そこへスマート家電が10台、20台と加わっていくわけです。
原因2:接続台数が増えると「順番待ち」が発生する
Wi-Fiは、同じ周波数帯につながっている機器どうしで電波を分け合い、順番に使う仕組みです。1台が送信している間、ほかの端末は待つ必要があります。台数が少なければ待ち時間は一瞬で済みますが、台数が増えるほど順番が回ってくる間隔は長くなります。
スマート家電が厄介なのは、通信量は小さいのに「こまめに通信する」点です。センサーの状態通知、定期的な生存確認、クラウドとの同期など、少量の通信を絶えず発生させます。ここで効いてくるのは通信の「量」ではなく電波を使っている「時間」です。データ量としては微々たるものでも、通信の回数が多いほど電波を占有する時間は積み上がり、順番待ちの列を長くしていきます。
▶ Wi-Fi 6以降は多台数に強い
この点は新しい規格で改善が進んでいます。Wi-Fi 6で採用されたOFDMAという技術について、Atermブランドの公式解説では「1通信で複数台の端末と通信できるため、端末が混みあった状態でも通信効率が大幅アップ」と説明されています(NECのAtermブランド公式サイト「AtermStation」のWi-Fi 6解説ページより)。機器の台数が多い家庭ほど、ルーターの世代が効いてくるということです。規格ごとの違いはWi-Fi 6・6E・7の違いとは|買い替えを検討すべきタイミングを解説でも詳しく解説しています。
原因3:機器の置き場所がバラバラで電波が届いていない
スマート家電は、スマホと違って「電波の良い場所へ持っていく」ことができません。玄関の鍵、洗面所の照明、ベランダ側のカメラ、収納の中のハブなど、電波にとって条件の悪い場所に固定されているのが普通です。
ルーターがリビングの床置き・テレビ台の裏という家庭は多いのですが、その状態で家じゅうのスマート家電に安定した電波を届けるのは無理があります。「アプリで操作すると反応するときとしないときがある」という症状は、たいてい電波強度がぎりぎりのラインにある機器で起きています。
対策の前に|家の中のネット機器を棚卸しする
対策を打つ前に、まずは現状を把握します。ここを飛ばして機器を買い足すと、たいてい失敗します。
ステップ1:台数と周波数帯を書き出す
紙でもスマホのメモでも構いません。ネットにつながっているものをすべて書き出してください。
- スマホ・タブレット・パソコン(家族全員分)
- テレビ・レコーダー・ゲーム機・スピーカー
- スマートリモコン・スマートプラグ・スマート照明
- ロボット掃除機・エアコン・冷蔵庫・洗濯機
- 見守りカメラ・ドアセンサー・スマートロック
- プリンター・体重計・空気清浄機
そのうえで、それぞれが2.4GHz専用なのか、5GHzも使えるのかを分けます。取扱説明書やメーカーのサポートページに記載があります。書き出してみると「2.4GHz側に15台以上ぶら下がっていた」というご家庭が珍しくありません。
ステップ2:「止まると困る機器」に印をつける
次に、通信が途切れたときの困り具合で優先順位をつけます。仕事のビデオ会議用パソコン、玄関のスマートロック、留守中のペットカメラなどは「止まると困る」側。一方、スマート体重計や気温センサーは、多少反応が遅れても実害はありません。
この仕分けが後の判断基準になります。限られた電波をどこに優先的に割り当てるかを決めるための下準備です。
スマート家電が多い家のネットワーク設計|4つの見直し
見直し1:2.4GHz帯を「空ける」発想に切り替える
スマート家電は2.4GHzから動かせません。ならば発想を逆にして、動かせる機器を5GHzへ移し、2.4GHz帯をスマート家電のために空けてやるのが基本方針になります。
スマホ・パソコン・テレビ・ゲーム機など5GHz対応の機器は、5GHzのSSIDに接続し直します。ルーターの設定画面で2.4GHzと5GHzのSSIDを別々に表示できるようにしておくと、機器ごとにどちらへつなぐかを指定できます。
見直し2:バンドステアリングの扱いを見直す
最近のルーターには「バンドステアリング」という機能が搭載されています。アイ・オー・データ機器の解説では、電波の混雑状況を検知して混雑の少ない帯域へ端末の接続を自動的に誘導する機能と説明されています(アイ・オー・データ機器)。手動で切り替える手間がなくなる便利な機能です。
ただし、2.4GHz帯にしか対応していないスマート家電とは相性が悪い場合があります。先ほどのNEC Atermのサポートページでも、2.4GHz帯専用の家電がつながらないときの対処として「バンドステアリングを無効にしたあとに2.4GHz帯のSSIDに改めて接続を行ってください」と案内されています。設定がうまくいかない、設定できても接続が不安定という場合は、ここを疑ってみてください。
見直し3:チャンネルとルーターの置き場所
先ほどの総務省 東海総合通信局のページでは、無線LANがつながりにくいときの改善策として「現在利用しているチャンネルを変更して使用してみてください」と案内されています。集合住宅では近隣のWi-Fiと同じチャンネルが混み合っていることがあるため、ルーターの設定画面からチャンネルを変えるだけで改善する場合があります。
置き場所も見直しましょう。
- 床置きをやめて棚の上へ。アイ・オー・データ機器は「床から高さ1~2mの位置に置くことが理想」と案内しています
- 家の端ではなく、できるだけ間取りの中心に近づける
- テレビ・電子レンジ・水槽・金属ラックのそばを避ける
- 収納の中や本棚の裏に押し込まない
置き場所が効くのは、電波に弱点があるからです。バッファローは設置に向いていない場所として「電波は水に吸収されやすいという特性があるため、水槽や花瓶など水が入ったものが近くにあると、電波が弱くなります」「電波は金属に吸収されやすいという特性があるため、金属製の棚の中や機械の近くに置くと、電波が弱くなります」と説明しています。ルーターを箱の中から出すだけで、遠くのスマート家電の反応が変わることもあります。
参考:アイ・オー・データ機器「Wi-Fiルーターを設置するときのポイント」/バッファロー「Wi-Fiルーターの置き場所」
見直し4:中継器・メッシュを足す前に確認したいこと
電波が届かない部屋があるとき、真っ先に検討されるのが中継器やメッシュWi-Fiです。有効な手段ですが、親機の電波が弱い場所に中継器を置いても、弱い電波を弱いまま中継するだけという点には注意が必要です。それぞれの違いはWi-Fi中継器とメッシュWi-Fiの違い|どちらを選ぶべきかにまとめています。
また、ルーター自体が古い場合は買い替えが先です。Wi-Fiルーターの寿命は何年?買い替え時期の見極め方と選び方もあわせてご覧ください。なお、家族が同時に在宅勤務していて速度そのものが足りないケースは、今回の「台数」の問題とは原因が異なります。そちらは複数人が同時に在宅勤務するとネットが遅い|家庭内の帯域を分ける・優先する方法で解説していますので、症状に合わせて読み分けてください。
それでも足りないときは「止まると困る機器」から有線に逃がす
設定を見直しても改善しない場合、次の一手は有線LAN化です。といっても、家じゅうを配線し直す必要はありません。棚卸しのステップ2で「止まると困る」と印をつけた機器から順に、Wi-Fiの列から抜けてもらうという考え方です。
仕事用のパソコン、テレビ、ゲーム機、据え置きの見守りカメラなどをLANケーブルでつなぐと、その分だけWi-Fiの順番待ちの列が短くなります。有線に移した機器が安定するだけでなく、Wi-Fi側に残ったスマート家電の環境も同時に良くなる——これが有線化の効果が二重に効くところです。動かせない2.4GHz専用のスマート家電にとって、これ以上ない環境改善になります。
賃貸でも壁に穴を開けずに有線LANを引けます|一原ITシステム
「有線がいいのは分かるけれど、賃貸だから壁に穴は開けられない」——これが有線化をあきらめる一番の理由です。一原ITシステムでは、壁に穴を開けないMoCA施工という方法をご用意しています。
MoCAは、すでに各部屋に配線されているテレビの同軸ケーブルをそのままLANの通り道として使う技術です。新たに壁を貫通させる工事が不要なため、多くの場合は大家さんの許可なく導入でき、退去時の原状回復も容易です(賃貸借契約の内容や建物の設備によっては事前確認をおすすめします。判断の目安は賃貸のLAN工事に大家の許可は必要?不要なケースを解説をご覧ください)。仕組みの詳細はMoCA(テレビ線LAN)とは?仕組みとメリットを解説にまとめています。
スマート家電が増えてWi-Fiが不安定になった、どこから手をつければいいか分からない——そんなときは、現在の機器構成と間取りをうかがったうえで、設定変更で済むのか、有線化まで踏み込むべきかをご提案します。東村山市を拠点に、所沢市・清瀬市・東久留米市など多摩エリアから埼玉県南部まで対応しています。サービスの詳しい内容は宅内LAN施工のページをご確認ください。パソコン・スマホのトラブルや格安SIMのご相談もあわせて承っており、対応内容はホームページにまとめています。




