LAN配線方式・全戸一括型なのにネットが遅い理由|マンションの共用設備

LAN配線方式や全戸一括型インターネットのマンションなのにネットが遅い、という相談は少なくありません。「VDSLが遅い」という話はよく知られていますが、VDSL以外の方式でも遅くなることはあります。その原因の多くは、部屋の中ではなく建物の共用部にあります。本記事では、東村山の一原ITシステムが、建物側が原因なのか宅内が原因なのかを切り分ける手順と、原因別に入居者ができること・できないことを整理してご紹介します。

「LAN配線方式なのに遅い」の正体

まず前提として、ご自宅のマンションがどの配線方式なのかが分からない場合は、マンションのネット配線方式の違い|光配線・LAN・VDSLの見分け方で先に確認してみてください。この記事は、方式を確認したうえで「VDSLではなかった。それなのに遅い」という段階の方に向けた内容です。

高速なメニューは光配線方式でしか提供されない

ここを理解するには、フレッツ光のマンションタイプが「サービスメニュー」と「配線方式」の組み合わせで決まっている点を押さえる必要があります。NTT東日本の案内によれば、サービスメニューは同じ集合住宅で加入が見込める世帯数によって、配線方式は申し込み後の建物の構内環境調査によって決定され、▶ どちらもお客さま側で選ぶことはできないとされています。

そのうえで重要なのが、速度の速いメニューの提供条件です。NTT東日本は、マンション・ギガラインタイプ、マンション・ハイスピードタイプ、ギガマンション・スマートタイプ(申込受付停止中)について、いずれも光配線方式でのご提供となると案内しています。

裏を返すと、建物の配線方式がLAN配線方式やVDSL方式である場合、こうした高速なメニューはそもそも選択肢に入りません。フレッツ光を提供する事業者の解説では、VDSL方式とLAN配線方式はいずれも上り下り最大100Mbpsと案内されています。「LAN」という名前から光配線方式に近い速さを想像しがちですが、実際にはそうではない、というのがここでのポイントです。

なお、これらの数値はベストエフォート(技術上の最大値)であり、実際の速度は利用機器・宅内配線・回線の混雑状況などによって低下するとされています。

「うちは光回線のはずなのに100Mbps前後で頭打ちになる」という場合、機器の故障ではなく、建物の配線方式がVDSL方式かLAN配線方式で、その上限に当たっているだけ、というケースがあります。

建物独自の設備なら、共用部のハブとケーブルが上限を決める

マンションによっては、フレッツ光ではなく建物独自にインターネット設備を導入していることがあります。この場合の上限は、共用部に置かれているスイッチングハブや、各戸へ伸びているLANケーブルの規格で決まるのが一般的です。

たとえば設備自体は1Gbps対応で設計されていても、共用部のスイッチングハブが100Mbpsまでの製品であれば、そこが上限になります。ここは入居者の部屋の中をどれだけ手を入れても変えられない部分です。ケーブルの規格そのものについてはLANケーブルの劣化・断線のサインと交換目安でも触れていますが、共用部の設備は管理側の管轄になります。

全戸一括型インターネットが夜になると遅い理由

「インターネット無料」「ネット完備」とうたわれている物件の多くは、全戸一括型と呼ばれる契約形態です。オーナーや管理会社がマンション全体分をまとめて契約する形で、入居者は入居後すぐ使い始められます。なお「無料」と表示されていても、その費用は家賃や管理費に含まれている形が一般的です。

この仕組みには、速度の面で構造的な特徴があります。▶ 1本の回線を共用部に引き込み、それを建物の入居者全員で分け合って使う形になるため、戸数が多いほど、そして同じ時間帯に使う人が多いほど、1戸あたりの速度は影響を受けやすくなります。平日の夜や休日など、多くの世帯が同時に動画を見たりオンライン会議をしたりする時間帯だけ極端に遅くなるのは、この共有が効いている可能性があります。

もうひとつ知っておきたいのが契約の主体です。全戸一括型はマンション単位の契約であるため、契約の変更や解約も全住戸まとめて行うことになります。入居者が個人の判断でその回線だけを解約したり、別のプランに切り替えたりすることは基本的にできません。ここが個別契約との大きな違いです。

光配線方式でも「共有」はしている

では光配線方式なら完全に独占かというと、そうではありません。光アクセスでは、局側から出た1本の光ファイバーを光スプリッタで分岐し、複数の利用者で共有するPONという仕組みが使われています。NTTのアクセスサービスシステム研究所によるGE-PONシステムの解説では、最大32分岐までの構成が想定されており、上り帯域はDBA(Dynamic Bandwidth Allocation)という機能によって、最大帯域を上限に最低保証帯域比で比例配分される仕組みだと説明されています(GE-PONは初期から導入されてきた方式で、現在はより高速な方式も使われています)。

ここで誤解しやすいのは「1Gbpsを32で割った分しか使えない」という理解です。DBAは使用状況に応じて動的に配分するため、単純な頭割りではありません。ただし、同時に多くの利用者が通信すれば1台あたりの取り分が小さくなる点は変わりません。光配線方式でも混雑時間帯に遅くなること自体は起こり得る、と理解しておくと過度な期待を避けられます。

なお、混雑の原因が回線設備ではなく接続方式にあるケースもあります。夜間だけ極端に落ちる場合は、IPv6(IPoE)への切り替えで改善することがあるため、IPv6(IPoE)とIPv4の違い|回線が遅いとき確認すべきこともあわせて確認してみてください。こちらは契約しているプロバイダ側の設定で対応できる場合があります。

建物側か宅内側かを切り分ける3ステップ

対策を考える前に、遅さの原因が建物の共用部にあるのか、部屋の中にあるのかを切り分けます。ここを飛ばすと、効果のない対策にお金をかけることになりかねません。

ステップ1:Wi-Fiではなく有線で測る

まずルーター(またはONU)にLANケーブルでパソコンを直結し、速度を測ります。Wi-Fiのまま測ると、電波環境の影響と回線そのものの影響が混ざってしまい判断できません。有線で測った値が、その回線で出せる速度の実力に近い数字になります。

ステップ2:時間帯を変えて測る

平日の昼間など空いている時間帯と、平日夜21時〜23時ごろの混みやすい時間帯の両方で測って比較します。時間帯によって大きく差が出るなら、建物やその先の設備の混雑が疑われます。逆に▶ どの時間帯でも同じくらい遅い場合は、混雑ではなく上限そのもの、あるいは機器や配線の問題である可能性が高くなります。

ステップ3:結果から原因を絞り込む

測定結果は、おおよそ次のように読み取れます。

  • 有線でも常時100Mbps前後で頭打ち:配線方式や共用部設備の上限に当たっている可能性
  • 有線は速いがWi-Fiだけ遅い:宅内の電波環境が原因の可能性(宅内の対策で改善が見込める)
  • 夜だけ極端に落ちる:共用部の混雑、または接続方式(IPv4 PPPoE)の混雑の可能性
  • 特定の機器だけ遅い:その機器やケーブル、ポートの問題の可能性

複数世帯で同時に使うことで遅くなっているケースもあります。その場合は複数人が同時に在宅勤務するとネットが遅いで紹介している、家庭内で帯域を分ける・優先する考え方も参考になります。

原因別にできること・できないこと

ここが最も大事なところです。原因が建物側にある場合、部屋の中の工事では解決しません。この点を正直にお伝えしておきます。

建物側が原因の場合

共用部の設備や配線方式が上限になっている場合、部屋の中の工事では上限そのものを動かせません。ただし、入居者の立場から動かせる手段がないわけではありません

NTT東日本は2024年11月22日から、▶ 光配線方式の設備(光スプリッタ)設置要望に関する特設窓口を開設しています。これは、VDSL/LAN配線方式の集合装置が単独で設置されている集合住宅にお住まいの入居者に向けた窓口です。光配線方式への切り替えには管理会社の了承のもと建物共用部へ光スプリッタを導入する必要があるため、入居者がWebフォームから管理会社の情報を入力すると、その情報にもとづいてNTT東日本の担当者が管理会社へ光配線方式の導入などを案内する、という流れになっています。

ただし、この窓口には公式に明記されている注意点があります。過度な期待をしないためにも、あらかじめ知っておいてください。

  • 対象はVDSL/LAN配線方式の集合装置が単独で設置されている集合住宅(光配線方式の装置が併設されている建物は扱いが異なります)
  • 内容によっては有償対応が必要な場合や、対応に時間がかかる場合、要望に沿えない場合もあるとされています
  • 管理会社とのやり取りの結果について、情報を提供した入居者へ回答はされないと明記されています

つまり「フォームを出せば必ず光配線化される」というものではありません。それでも、入居者が自分で踏める一歩がある点は知っておいて損はないと思います。

並行して現実的なのは、管理会社やオーナーへ直接相談することです。その際は、上で測った数値を根拠として添えてください。「なんとなく遅い」ではなく「有線直結で測ったところ、昼間は何Mbps、夜間は何Mbpsだった」という具体的な数字があるほうが、話は前に進みやすくなります。

宅内が原因の場合

一方、有線では十分な速度が出ているのにWi-Fiだけが遅い、特定の部屋だけ電波が弱い、という場合は宅内の対策で改善が見込めます。もっとも確実なのは、使いたい部屋まで有線で届かせることです。

ただ、賃貸や分譲マンションでは壁に穴を開ける配線工事はハードルが高くなります。そこで当社が採用しているのが、各部屋にすでに来ているテレビの同軸ケーブルを使ってLAN信号を通すMoCA(テレビ線LAN)という方式です。新たに壁へ穴を開ける必要がないため、賃貸でも導入しやすいのが特長です。大家さんの許可が必要かどうかについては賃貸のLAN工事に大家の許可は必要?にまとめています。

正直にお伝えしたいこと:MoCAや宅内の有線化で改善できるのは、あくまで「部屋の中の届き方・安定性」です。建物へ入ってくる回線そのものの上限が100Mbpsであれば、宅内工事でそれを超えることはできません。当社では事前に状況をうかがい、宅内の対策で効果が見込めないと判断した場合はその旨をお伝えしています。

判断に迷ったら一度ご相談ください

ここまで見てきたとおり、マンションのネットが遅い原因は「配線方式の上限」「共用部の混雑」「宅内の電波環境」「機器や設定」など複数あり、しかも対処できる主体がそれぞれ違います。ご自身での切り分けが難しいときは、状況をうかがったうえで、どこが原因の可能性が高いかを一緒に整理するところからお手伝いします。

一原ITシステムは東村山市を拠点に、多摩地域と埼玉南部で宅内LAN施工を行っています。壁に穴を開けないMoCA施工に対応しているため、賃貸や分譲マンションでもご相談いただけます。サービスの全体像はトップページもご覧ください。

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