ネットが遅いと感じたときに、速度測定の結果から原因がどこにあるのかを切り分ける手順を解説します。遅さの原因は、スマホやパソコン、Wi-Fiの電波、ルーター、家の中のLAN配線、回線やプロバイダと、いくつもの区間に分かれています。本記事では東村山の一原ITシステムが、自宅でできる測定のコツと、結果の読み取り方をまとめてご紹介します。
「遅い」はどこで起きているのかを先に分けて考える
インターネットの通信は、手元の端末から回線の先まで、いくつもの区間をリレーのように通っています。家庭の場合、大まかには次の5つです。
▶ ① 端末:スマホ・パソコン・ゲーム機そのもの
▶ ② Wi-Fiの電波:ルーターから端末までの無線区間
▶ ③ ルーター:家の中の通信をまとめて外へ出す機器
▶ ④ 宅内の配線:LANケーブル、スイッチングハブ、壁のLAN端子など
▶ ⑤ 回線・プロバイダ:建物の設備、光回線、プロバイダの設備
通信の速さは、このうちいちばん細い区間に引っ張られます。回線が1Gbpsでも、部屋までのWi-Fiが弱ければそこで詰まりますし、逆に家の中をどれだけ整えても、回線そのものの上限は超えられません。
「ルーターを新しくしたのに変わらなかった」「中継器を足したら余計に不安定になった」というときは、詰まっている区間とは別の場所に手を入れていることがあります。速度測定は、この5つのうちどこが細いのかを見つけるための道具だと考えてください。
速度測定で見る数値と、正しく測るための条件
スピードテストのサイトやアプリで測ると、たいてい次のような数値が表示されます。
下り・上り・pingの意味
▶ 下り(ダウンロード):受け取る速さです。動画を見る、Webページを開く、ファイルをダウンロードするといった場面で効きます。単位はMbps(1秒あたりに運べるデータ量をビットで表したもの)です。ゲームやファイルのダウンロード画面に出る「MB/s」はバイト単位で、1バイト=8ビットなので、10Mbpsはおよそ1.25MB/sに当たります。
▶ 上り(アップロード):送り出す速さです。Web会議で自分の映像を送る、写真をクラウドへ上げる、ライブ配信をするといった場面で効きます。下りの数値だけ見て「速いのに会議が止まる」と悩む方は、ここが細いことがあります。
▶ ping(応答速度):データが相手と往復する時間で、単位はms(ミリ秒)です。小さいほど反応が速く、オンラインゲームやWeb会議の遅れに直結します。測定アプリによっては、pingのばらつきを表す「ジッター」も表示されます。pingと速度の違いはオンライン対戦ゲームのpingを下げる方法|有線化と設定の見直しで詳しく解説しています。
1回だけの数値で判断しない
速度測定の数値は、測るたびに変わります。測定の条件がそろっていないと、比べても意味のない数字になってしまいます。原因を切り分けるときは、次の点をそろえて測ってください。
▶ 同じ測定サイト(アプリ)を使う:測定サイトによって測定先のサーバーや計測方法が異なるため、別のサイトの数値同士は比べられません。
▶ 家族の大きな通信を止める:動画の視聴やゲームのダウンロード、パソコンのアップデートが裏で動いていると、その分だけ数値が下がります。
▶ スマホはモバイル通信を切る:iPhoneの「Wi-Fiアシスト」のように、Wi-Fiの接続状況がよくないときに自動でモバイルデータ通信へ切り替える機能があります。Wi-Fiを測っているつもりで、携帯回線の速さを見ていた、ということが起こりえます。
▶ VPNを切る:会社支給のパソコンなどでVPNにつないでいると、会社側の設備を経由した速さになることがあります。会社のルールでVPNを切れない場合は、VPNを使わない別の端末で比べてください。
▶ 3回ほど測って真ん中の値を使う:1回だけ極端に良い、あるいは悪い数値が出ることがあります。
そして、測った結果は必ずメモに残してください。あとで比べるときにも、プロバイダや業者へ相談するときにも、「なんとなく遅い」より「いつ・どこで・どうつないで何Mbpsだったか」があるほうが、原因の特定がずっと早くなります。
| 日時 | 場所 | 端末・接続 | 下り | 上り | ping |
|---|---|---|---|---|---|
| 平日 12時 | ルーターの前 | スマホ・Wi-Fi | |||
| 平日 12時 | 仕事部屋 | スマホ・Wi-Fi | |||
| 平日 12時 | ルーターの前 | パソコン・Wi-Fi | |||
| 平日 12時 | ルーターの前 | パソコン・有線 | |||
| 平日 21時 | ルーターの前 | パソコン・有線 |
このような表を作っておくと、次の章の手順で出た結果をそのまま書き込めます。比べる2つの行のあいだで変える条件を1つだけにしておくと、どこで数値が変わったかがひと目で分かります。
原因を切り分ける5つの手順
ここからが本題です。条件を1つずつ変えて測り、数値が大きく変わった条件のところに原因がある、と考えます。いくつかを同時に変えると、どれが効いたのか分からなくなるので、1回に変えるのは1つだけにしてください。
手順1:同じ場所で、別の端末と比べる
まず、遅いと感じている端末と、家族のスマホなど別の端末を同じ場所に並べて測ります。1台だけ極端に遅いなら、原因はその端末側にある可能性が高くなります。古い端末で新しいWi-Fi規格に対応していない、OSの更新が溜まっている、省電力の設定が効いている、といった理由が考えられます。この場合、回線やルーターに手を入れても改善しにくいです。まずは端末の再起動や更新を試してみてください。
手順2:同じ端末で、ルーターの前といつもの部屋を比べる
次に、同じスマホで「ルーターのすぐそば」と「いつも使う部屋」の2か所で測ります。ルーターのそばでは十分な数値が出るのに、いつもの部屋で大きく落ちるなら、原因はWi-Fiの電波の届き方です。距離、壁や床、階の違い、家具や水回りが電波を弱めています。
このとき、スマホがどちらの周波数帯につながっているかも見てください。Wi-Fiには主に2.4GHz帯と5GHz帯があり、5GHz帯は他の機器の電波と干渉しにくく通信が安定しやすい一方で、壁や天井などの障害物に弱く、距離が離れると電波が弱まりやすい性質があります。反対に2.4GHz帯は遠くまで届きやすい反面、電子レンジやBluetooth機器など同じ周波数帯を使う機器が多いため、干渉を受けて不安定になりやすいとされています。ルーターから離れた部屋では、どちらにつながっているかで数値が大きく変わることがあります。ルーターによっては周波数帯ごとにネットワーク名(SSID)が分かれていて、名前に入った「5G」「2G」などの文字で見分けられます(表記はメーカーや機種によって違うので、ルーター本体のラベルや説明書で確認してください)。
電波の届き方が原因なら、ルーターの置き場所の見直し、中継器やメッシュWi-Fiの導入、使う部屋までの有線化が選択肢になります。中継器とメッシュの違いはWi-Fi中継器とメッシュWi-Fiの違い|どちらを選ぶべきかにまとめています。
手順3:パソコンをルーターに有線でつないで測る
パソコンがあれば、まずルーターのそばでWi-Fiのまま測り、次にルーターのLAN端子にLANケーブルで直接つないで測って、2つの数値を比べます。有線だと速いなら詰まっているのは無線区間で、家の中の対策で改善が見込めます。有線でも遅いなら、ルーター、宅内の配線、回線・プロバイダのどこかに原因があるので、手順4・5へ進みます。LAN端子のないノートパソコンでUSB接続のLANアダプターを使う場合は、アダプターが1Gbpsに対応しているかも確認してください。100Mbpsまでの対応だと、手順4の頭打ちと同じ状態になります。
ここで一度、ルーターを再起動して測り直してみるのも有効です。再起動は電源プラグの抜き差しで行い、本体のRESET(初期化)ボタンは押さないでください。機種によっては長押しで設定が初期化され、インターネットの接続設定をやり直すことになります。ONU(光回線の終端装置)とルーターが別々の機器なら、ルーター→ONUの順に電源を抜き、30秒以上おいてからONU→ルーターの順に挿し、数分待ってから測ります。長く動かし続けたルーターは、再起動で数値が戻ることがあります。再起動で一時的に直っても、すぐにまた遅くなるようなら、ルーターの処理能力が足りていないか、寿命が近いことも考えられます。買い替えの目安はWi-Fiルーターの寿命は何年?買い替え時期の見極め方と選び方にまとめています。
手順4:100Mbps前後で頭打ちになっていないか見る
有線で何度測っても、数値が90Mbps台あたりで止まり、それ以上にならない。この場合は、経路のどこかに「100Mbpsまで」の区間があることを疑います。代表的なのは次の2つです。
▶ 建物の配線方式や契約メニューの上限:マンションやアパートでは、建物の共用部から各部屋までの配線方式や、契約しているメニューによって、回線の上限が決まっていることがあります。たとえばNTT東日本の「フレッツ 光ネクスト」の提供条件ページでは、マンションタイプの通信速度は上り下りとも最大概ね100Mbpsと案内されており、それより速いメニューは光配線方式のみの提供とされています(2026年9月時点)。光配線方式の建物でも、フレッツ 光ネクストの契約がマンションタイプであれば上限は最大概ね100Mbpsです。戸建ても同じで、同社の戸建て向けの提供条件ページでは「ファミリータイプ」の通信速度が上り下りとも最大概ね100Mbpsとされています。なお、VDSL方式の建物では、90Mbps台まで届かずにもっと低い値で止まることもあります。NTT東日本の同じページにも、マンションタイプのVDSL方式は、集合住宅内の設備状況や他回線との干渉などにより通信速度が低下する場合があると書かれています。お住まいの建物がどの方式かはマンションのネット配線方式の違い|光配線・LAN・VDSLの見分け方で確認できます。
▶ 家の中の機器や配線の上限:回線が1Gbps級でも、途中にあるルーター、スイッチングハブ、パソコンのLAN端子のどれかが100Mbpsまでの対応だと、そこで止まります。NTT東日本の同じページにも、最大100Mbpsを超える通信速度で使うには1Gbpsに対応した環境(対応LANケーブル、パソコン端末等)が必要と書かれています。
家の中側を確かめる方法として、パソコンの「リンク速度」を見るやり方があります。Windowsであれば、Windowsキー+Rで「ncpa.cpl」と入力して「ネットワーク接続」の画面を開き、有線LAN(イーサネット)の状態を開くと「速度」の欄に表示されます。ここに出るのは、パソコンと直接つないでいる機器(ルーターやハブ)との間の速さです。1Gbpsの環境なのにここが100Mbpsになっている場合は、LANケーブルや端子、途中の機器、パソコン側のLANの設定のどこかを疑います。反対に1Gbpsと表示されても、ルーターの回線側の端子が1Gbpsに対応しているかまでは分からないので、そこはルーターの仕様で確認してください。ケーブルの傷みや断線で本来の速さでつながらなくなることもあるため、心当たりがあればLANケーブルの劣化・断線のサインと交換目安|遅い・切れるの原因かももあわせてご覧ください。
手順5:時間帯を変えて測り、夜だけ遅いかを見る
最後に、パソコンを有線でつなぎ、家族の大きな通信を止めた同じ条件で、平日の昼と夜を測り比べます。昼は十分なのに夜だけ極端に落ちるなら、回線やプロバイダ、建物の共用設備の混雑が疑われます。回線の「最大100Mbps」「最大1Gbps」といった数値は技術規格上の最大値で、実際の速度は利用環境や回線の混雑状況によって大きく下がる場合があります(いわゆるベストエフォート)。宅内の配線を替えても、この混雑そのものは解消しません。
見直す先は、契約している接続方式やプロバイダです。接続方式をIPv6(IPoE)に切り替えることで改善する場合があり、その際は対応したルーターが必要になることもあります。仕組みはIPv6(IPoE)とIPv4の違い|回線が遅いとき確認すべきことで解説しています。マンションで共用設備が原因と考えられる場合の、入居者として取れる手段はLAN配線方式・全戸一括型なのにネットが遅い理由|マンションの共用設備にまとめています。
測定結果の読み取り方と、相談先の目安
5つの手順の結果を、原因のありそうな場所と、次にやること・相談先に整理すると次のようになります。
| 測定の結果 | 原因がありそうな場所 | 次にやること・相談先 |
|---|---|---|
| 1台だけ遅い | 端末 | 再起動・OSの更新。改善しなければ端末のメーカー |
| ルーターの前は速く、部屋だと遅い | Wi-Fiの電波 | 置き場所の見直し、中継器・メッシュ、部屋までの有線化 |
| 有線でも常に遅い | ルーター・宅内配線・回線 | 再起動、リンク速度の確認。機器に問題がなければプロバイダ |
| 有線で90Mbps台止まり | 100Mbpsまでの区間(建物の配線方式・契約メニュー/機器・ケーブル) | 配線方式とリンク速度の確認。建物側なら管理会社・回線事業者 |
| 夜だけ極端に遅い | 回線・プロバイダ・共用設備の混雑 | 接続方式(IPv6 IPoE)やプロバイダの見直し。マンションの共用設備が原因なら管理会社 |
実際には、原因が1か所だけとは限りません。「建物の配線方式は100Mbpsまでで、しかも部屋までのWi-Fiも弱い」というように、2つが重なっていることもよくあります。その場合も、表の上から順に1つずつ潰していけば、どこまでが家の中で改善でき、どこから先が回線側の問題なのかが見えてきます。
用途ごとにどのくらいの速さが必要かも気になるところだと思います。在宅勤務で家族が同時に使う場合の考え方は複数人が同時に在宅勤務するとネットが遅い|家庭内の帯域を分ける・優先する方法、配信で上りが足りないときの考え方は動画配信・ライブ配信に有線LANが必要な理由と導入方法|賃貸OKで紹介しています。
部屋までの区間が原因なら、壁に穴を開けない有線化も選択肢です
切り分けの結果、「ルーターのそばの有線は十分速いのに、使いたい部屋に届く頃には遅くなっている」と分かった場合、もっとも確実なのは使う部屋まで有線でつなぐことです。ただ、賃貸住宅や、建物を傷めたくない持ち家では、壁に穴を開けてLANケーブルを通す工事はハードルが高いものです。
一原ITシステムでは、テレビ端子まで通っている同軸ケーブルをLANの通り道として使う、MoCA(モカ)という方式で有線環境をつくっています。新たに壁へ穴を開けずに部屋同士をつなげるため、賃貸でも導入しやすいのが特長です。仕組みはMoCA(テレビ線LAN)とは?仕組みとメリットを解説、ご自宅で使えるかどうかの目安はテレビ端子で有線LANは作れる?|MoCAが使えるか自分で確認する方法をご覧ください。
なお、正直にお伝えしておくと、MoCAや宅内の有線化で改善できるのは、ルーターから部屋までの区間です。手順4で建物の配線方式が上限になっていると分かった場合や、手順5で夜の混雑が原因と分かった場合、宅内の工事で回線そのものの上限や混雑が解消するわけではありません。まずは状況をうかがったうえで、宅内の対策で効果が見込めるかを一緒に確認します。
東村山市を拠点に、所沢市・清瀬市・東久留米市・西東京市・練馬区・新座市・朝霞市など、多摩地域と埼玉県南部で宅内LAN施工とネット環境の改善を行っています。「測ってみたけれど、どこが原因か判断がつかない」という段階でも、測定のメモをお知らせいただければ一緒に整理するところからお手伝いします。施工内容の詳細は宅内LAN施工のページ、サービス全体はトップページをご覧ください。ご相談やお見積りのご依頼はお問い合わせフォーム、またはお電話・LINEからお気軽にどうぞ。




